日時:令和3年7月20日・21日
場所:オンライン研修
令和3年7月20日、21日にJIAMのオンラインセミナーに参加した。本セミナーでは「健康しが」の取組、政治学からの議会、人口減少社会の自治体の役割、Society5.0と行政デジタル化について専門家による講義を受けた。
【講義1】
「本当の意味での『健康しが』へ」
滋賀県 知事 三日月 大造 氏
概要:滋賀県の特色と文化・観光資源の紹介とコロナ禍による危機を転機とすることでポストコロナ社会に向けた滋賀県の取組を現職の知事である三日月氏が講演した。
【講義2】
「改めて議会とは何かを考えるー政治学の知見から」
京都大学大学院法学研究科 教授 曽我 憲悟 氏
概要:議会における役割と議会での議決に関する手段を様々な観点から分析した内容を中心とした講義であった。
1)集合知が働くとき、働かないとき
・答えがわからないときに答えを出す有効な方法の一つ=>多様な人々の考えの平均をとること
・「多様であること」(三人寄れば文殊の知恵:コンドルセの陪審定理)が必要であるが、アンカーに引きずれると多様性がなくなる
2)議会での決定
・議会での決定は、全員の個別な意見を用いずに多数決で決めることから集合知を探索する訳ではない。
・議会における決定は、一つの集団として「答え」とするものを選ぶ必要がある=>多数決で「答え」を選択
3)議会における議決の解決策
・過半数でなくてもいい特別多数決もあるが、より多くの同意を得られる一方で決まらないことが増える。
・多くの場合では、過半数を基準とすることで選択肢が二つの場合は、必ず決定することができる。
・選択肢が三つ以上の場合は、過半数で決まらない可能性もあるが、その場合は、相対多数と選択肢を二つに絞った決選投票とがある。
相対多数の場合=>過半数のものが最下位に評価する選び出す可能性がある
決選投票の場合=>戦略投票で結果が変わる(相対多数でもあり得る)
・三つの選択肢がある場合は、それぞれへの選好(どれが1番、2番、3番か)を生かしながら決めていく
コンドルセ勝者:選択肢のペアを作りって、どのペアにも勝った場合に、それを選択する
ボルダ得点:1位3点、2位2点、3位1点として合計点で決める
・多くの政策課題の場合は、どの程度、どちらを選ぶかをめぐって、幾多つかの選択肢がある場合が、ほとんどであり、その場合の戦略投票の前提は、他の人が何を好んでいるかを把握することが必要。
・いずれの場合でも、この決め方でいいのか?決め方により結論は変わるのか?等を考えることが重要になる。
4)議会での議論の必要性
・選好を集約して集団として一つの結論を得ることが前提であるが、議論をしていくことで、当初の各自の選好と選択肢が、その根拠の問い直しや、目標実現に向けた手段を考えていく上で当初は想定されていなかった選択肢も検討の対象になる。
・人の考えには、バイアス(素早く判断するための判断の傾向:生存のために身に付けてきたもの)が働いていて、自分が思っている証拠を探してしまう確証バイアス(ハロー効果:決めつけ)に左右される。
・通常、情報を提供する方は「不要な情報は言わない」という前提から、確率として捉える方が間違わない。
5)まとめ
・議会が果たす様々な役割と可能性:
意見が分かれる場合に、一つの決定をするだけでなく、答えを全員で探すことも、また、議論をする中で意見を変えることや新たな選択肢を探すことも可能となる。
・多様性が持つ強みと難しさ
多様であれば有る程決定の難しさは増していくが、多様でなければ選択を間違う可能性も増していく。
=>各自の議会の在り方を振り返って、其々の強みや弱みを踏まえた決め方で決定していくこと期待
【講義3】
「人口減少社会における地方自治体の役割」
明治大学政治経済学部 教授 加藤 久和 氏
1)人口減少時代に向けて直視すべき現実に関して
・今後50年間で総人口の1/3が減少する(地方を中心に)が、地方消滅以降の議論が有効に活用されてきたか?
2)人口移動の現状と東京への一極集中について
・現在の人口は東京圏に集中している。また、人口移動は雇用と密接な関係があり、東京一極集中をどにように考えるか?(集積の経済と混雑の減少)
3)地方創生と自治体の役割と課題
・地方創生に向けた視点に整理―コストと効率性を踏まえて、新たな国土づくりを考える必要がある。
=>新たな国土のあり方と地方自治体の役割を考える
【講義4】
「Society5.0時代の到来と行政のデジタル化」
東京大学大学院情報学環学環長 教授 越塚 登 氏
1)デジタルの課題
・IT/ICTの課題、日本のデジタル分野の課題等、デジタル技術で国民の日常は大きく変わった状況の説明
2)デジタルガバメントの動向
・デジタル庁の経緯(1)、デジタル庁の経緯(2)、地方自治体・地方公共団体のデジタル化と政府の主要な動きの解説
3)地方自治体のデジタル化 全体の状況
4)デジタル化、DX
・ デジタル化/DXの構造、変革すべきDXプロジェクトを阻む課題、業務の効率化とデジタルのマイナス効果、DXのアイデア事例の紹介
5)自治体行政のデジタル化
・地方自治体/地方公共団体のデジタル化に向けた政府の主要な動き:デジタルガバメント実行計画、デジタルガバメント閣僚会議、内閣府IT総合戦略室、総務省「地方自治体のDX推進に係る検討会」、総務省「地方自治体における業務プロセス/システムの標準化及びAI/ロボディスクの活用に関する研究会」等の概要の説明
6)地域課題の解決と地域経済の活性化
・電力データとAI活用による不在配送問題の解決、Smart transportation、データ駆動型農業(IoTx農業)、IoT林業、IoTx漁業、スマート水産業(AI+IoTによる車海老養殖支援)、Small DX(地域でDXを成功させるには)等の紹介
=>今後、目指す地域型のIoTモデルには以下の様な三つのステップを踏まえた取組が重要になるとのことであった。
<ステップ1> 地方でPoC(概念実証)、Smallスタート、共創
<ステップ2> 地方での成功
<ステップ3> 世界へのスケールアップ