議員研修  JIAM令和4年度第1回市町村議会議員特別セミナー

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日時:令和4年4月11日・12日

場所:オンライン研修(会派室)

令和4年4月11日、12日にJIAMのセミナーのオンライン研修を受講した。本セミナーでは地方行政と政策デザイン、少子化問の日本的特徴、行動するSDGs~「ゴミ」からのアプローチ~、歴史的資源を活用した観光まちづくりの活動についての講義があった。

【講義1】
「地方行政と政策デザイン」
福井県知事 杉本達治 氏

概要:

福井県知事として、県政運営の基本原則となる徹底現場主義(県民主役)に関する講義。

内容:

①職員クレド → 志、お約束、行動規範

「現場」「挑戦」「協働」「創意工夫」「効率化」

②OODA(ウーダ)ループ

・徹底現場主義により「課題発見」→「実行」→「改善」をできるだけ早くまわす。

・「政策トライアル枠予算」の積極活用、随時見直し「いつでも」「何度でも」

・短時間で解決する「タスクフォース」

③若手職員のチャレンジ応援

・チャレンジ政策提案 若手職員が知事に直接プレゼンし、優れた政策は事業化へ。

・“Life style shift”(若手職員のアイデアを活かした働き方改革)

・ペーパーレス化、在宅勤務・フリーアドレス、男性職員の育児休業92.7%の取得率。

・デジタル化により資料の配布が不要、職場に行かなくてはならないなどの制限がなくなる。

・若者・女性の積極登用

・課長相当の業務を行う「ディレクター」を創設

④チームふくい(市長連携)

・市町村との政策ディスカッションの開催。年に一度は市長、町長と一堂に会し議論。

・市長議員との意見交換 住民目線での要望、現場の課題をキャッチ。

・各市長への技術職員の派遣。土木職などの技術職員が不足していることを受けて派遣。

・市町協働課題解決チームの設置。行政手続きのオンライン化、マイナンバーカードの普及、公共施設管理の適正化に対応。

⑤政策オープンイノベーション

・長期的視点(長期ビジョン、実行プラン)、機動的視点(クレド、OODAループ、政策トライアル枠予算)、創造的視点(デザイン思考)、総合力発揮(市町との連携)の4つの視点から政策オープンイノベーションにつなげている。

⑥政策デザインはデータ重視

・政策目的を達成するための筋道(デザイン思考の活用)

〇これまでは経験や積み上げにより形成⇨ユーザー視点、全体を俯瞰、手法の最適化。

〇デザイン思考 課題解決➕価値創造(楽しさ、豊かさ、共感など)

○EBPMの活用 経験からデータへ

【政策デザインの実例】

①新型コロナ感染症対策

・新型コロナ対策「福井モデル」:早期発見/早期治療/常時見守り→感染拡大/重症化の防止

・入院コーディネートセンター(入院調整の一元化)の設置

・「おはなしはマスク」の徹底

・ワクチン3回目接種の促進

・感染拡大防止と経済活動の両立(デジタルバウチャー「ふく割」を発行し、消費喚起

②人口減少対策

・新たな政策:他県もうらやむ「ふく育県」へ 

   予算20億円→40億円

  「お金、時間、体力」負担感軽減

  子育てを「楽しい」に

○行政サービスと納税地のギャップ:ふるさと納税制度

○大学定員の偏在

③分散型国家への転換

・新たな法人税の提案

④ふくい型林業経営モデル

・森林事業者と林業事業体が「主閥・再造林・保育」について10年程度の長期一括契約を終結(効果:主伐の推進による収益UPと県産材生産量の拡大、森林所有者の管理負担の解消)

⑤交通安全家族 省略

⑥SDGs推進 省略

感想:

滋賀県の特色と文化・観光資源の紹介とコロナ禍による危機を転機とすることでポストコロナ社会に向けた滋賀県の取組を現職の知事である三日月氏が講演した。

【講義2】
「日本の小子化対策はなせ失敗したのか
京都大学こころの未来研究デンター 教授 広井 良典 氏

概要:

滋賀県の特色と文化・観光資源の紹介とコロナ禍による危機を転機とすることでポストコロナ社会に向けた滋賀県の取組を現職の知事である三日月氏が講演した。

【講義3】
行動するSDGs~「ごみ」からのアプローチ
京都大学大学院 地球環境学堂 准教授 浅利美鈴先生 氏

概要:

世代や分野を超えての議論することで、連携プロジェクトの種が育つ。持続可能なコミュニティの創出である。そのためには、机上の研究だけでなく、人の流れの中に飛び込み、ゴミとは何かを理解したうえで行動しなければならない。  

内容:

ゴミとは何か?不要で価値がないと思われて捨てられたもの。⇒それは本当にゴミなのか?                     必要性や価値の判断は、人・環境や状況。時代によっても変わる。燃やし続けるのはもはや時代遅れ。

家庭ごみ(燃やすごみ)は、食料品や紙などのバイオマスが課題。また、燃やせるゴミの約50%は容器包装材。ただし海外は埋め立てが主なので、その点日本は燃やしているのでその時点では進んでいるのだが・・・。(世界のプラスチックは32%が環境放出。日本では1%未満)

日本では1990年にはすでに海洋プラスチックへの指摘はされてはいた。2013年では、プラスチック廃棄物は年9.4百万(前廃棄物の2%)◆リサイクル率24.8%。リサイクル+熱回収81.6%。

プラスチック資源循促進法は、これまでのリニアエコノミー→サーキュラーエコノミー(資源循環の高度化に向けた環境整備・環境経済)への移行である。

今まではリサイクル活動を一生懸命おこなってきたが、実は、元栓を止めた方が早道なのでは? 

これまでの焼却から多角分散へ。子どもたちはSDGsの17の壁を軽々と乗り越える。持続可能な地域モデルの構築を目指した。それが、SDGsバレー化を目指し、京都里山SDGsラボである。バイオガス化施設のオンサイト利用と農業等の連携を核とした里山(中山間地域)と市街地を結ぶ多様な地域資源・エネルギーの脱炭素型循環モデルである。

感想:

20代30代は先進層と無関心層の2極化傾向にあるという。10代はどうなのか、意識や行動が形になって現れるためには教育のみならず社会の環境意識や大人の購買意識が大変影響すると思う。

3月に岡谷市もゼロカーボン宣言をおこないこれまで以上にゼロカーボンに向けた施策を大小打ち出したが、プラスチック新法に先駆けサンデーリサイクルですでに資源化に取り組んでいることは、もっと広範に広めなければならない。世代多様性の視点を大切にすることが重要だとあらためて感じている。

【講義4】
「歴史的資源を活用した観光まちづくり
バリューマネジメント株式会社 代表取締役 他力野 淳 氏

概要:

文化財など歴史的資源を活用した観光まちづくりを行っているバリューマネジメント株式会社の取組の紹介に関するセミナー。バリューマネジメント株式会社は、全国の様々な歴史建造物54棟を活用した活動を展開しており、その代表的な事例として愛媛県の大洲市における取組を紹介している。

・分散型ホテル:まちの賑わいサークル

・まちの資源の活用:国登録重要文化財の活用:臥龍山荘、大洲城櫓3棟

※大洲城天守泊という稀有な体験を提供することで観光の目玉とすると共に観光宣伝効果を狙う。

内容:

① 観光を一つの突破口として、地域が自走するまちづくりを目指す必要がある。

<現状>            

日本のまちづくりは「税金の再配分」で成り立っており、現在は、人口減少、若年層の流出、労働 人口の減少等により人とお金が失われている。特に税収減が最も大きい課題になっている。

<対策>                  

観光を一つの突破口として稼ぐチカラを取り戻す。(地域の魅力を磨いてまちをマネタイズする。) その為には、来訪者の滞在期間を長くすることでお金を落とす時間を増やすこと。      

– 分散型ホテル:まちの景観を壊さずに回遊性を図ることで違う価値観を提供できる。

– 「観る文化財から活用する文化財へ」:エリアの付加価値を向上させる。

– 手段:民間が事業リスクを取って税金に頼らないまちづくりをすることで持続可能なまちづくりとなる。

<運用>

組織の運用は、民間がリストを取り、独自の力で行う。

– 当初(イニシアル)は税金を投入しても、運用自体には税金を投入しない。

– リスクを越えて長期的に事業を展開出来る事業者を創出する。

② 昭和型観光(集客力の高い観光資源に物販等が集まるコバンザメ商法)から未来型観光(サービスやコンテ ンツの提供により能動的な体験型観光)への転換が他所との差別化に向けて不可欠となっている。

③ 環境(仕事・生活)が整っていなければ生涯定住することが難しい。雇用創出が定住に向けたキーとなる。 「産業を作り、事業化し、生活環境を整える」=>「未来がある」=>「定住につながる」

④ 「取組が魅力的」+「雇用創出の実績」の二つが認識できると、地域へのUIターンの可能性が広がっていく。

感想:

・地域の資源を観光資源として活用するツーリズムは、非常に大きなポテンシャルがあることがわかった。岡谷市 も他所にない様々な資源があるので、それを上手く活用する仕組みが不可欠である。

・何処でもあるような「昭和型観光」から「稀有な体験の観光」へと考え方を変えていくことが重要になっている。

・歴史的資源も含めて、地域資源を活用して持続可能な取組にしていくには、税金に頼らずに自走できる仕 組みが必要である。その為には、それらの取組に愛着と責任と情熱を持った人材の育成が重要になっている。

・岡谷市の資源を複合的、多重的に活用して観光や移住定住及び教育も含めて総合的に取り組んでいくに は行政の枠組みでは難しい。「自走」を前提とした仕組みや体制を構築することが“Must”であると強く感じた。