会派視察:東北方面
日時 | 2019年 9月10日~13日 |
場所 | 岩手県 中部水道企業団、紫波町 オガールプロジェクト 宮城県 釜石地方森林組合、石巻 (株)まちづくりまんぼう |
目的 | ①マンガをコンテンツとした地域活性化のビジョンに対する現在の状況 ②石巻市街地の復興計画の進捗状況とその関わり ③まちづくりまんぼうの会社運営状況と今後の計画 ③石巻市委託事業(マンガによるまちづくり亊業)と石巻復興計画との関わり |
視察報告:宮城県石巻市 ㈱まちづくりまんぼう
【石巻市】 ※平成29年度現在
・概要 :宮城県第二の都市。2005年に1市6町による合併
人口 | 145,386人(高齢化率:31.09% 2040年には人口の40%減を予測) |
面積 | 554.6k㎡ |
産業 | 水産加工、製紙、小売、卸業 |
震災により小売店数、商品販売額、小売業床面積等が65~75%程度に減少しており、市の復興に向けては商業(主に中心市街地)の復興とまちづくりが緊急の課題となっている。
【㈱まちづくりまんぼう】 ※平成29年度現在
概要 :2001年2月 第三セクターとして設立
資本金 | 6,000万円(50%は石巻市出資) |
スタッフ数 | 22名(役員13名内常勤1名 市職員1名) |
売上高 | 258,000(千円)内補助金(指定管理)55,000(千円) ※売上の約21% |
亊業
①石ノ森萬賀館運営亊業:石巻市から委託された指定管理業務
②石ノ森キャラ等のマンガグッズによる販促亊業:石ノ森キャラの版権を取得した独自の販促亊業
③まちづくり亊業:販促亊業の収益を行政、市民と一体となったまちづくり亊業に投資
石ノ森章太郎作品(マンガ文化)を核とした地域活性化の拠点として石ノ森萬賀館の指定管理業務からスタートしたが、震災後は石巻市、特に中心市街地の復興とまちづくりに向けて、市民、行政、関係団体等の連携により、より広範で多様な亊業を担っている。
①石ノ森萬賀館運営亊業
石ノ森萬賀館(Mangattanミュージアム)
石ノ森章太郎氏の作品を中心とした日本最大級のマンガミュージアム。石巻市から管理運営の指定管理業務を委託されており、情報発信やマンガ文化の振興を推進。
※平成29年度現在
-入場者(有料):83,790人
-入館料売上 :65,201(千円)
※売上の約25%
※視察時は「弱虫ペダル」(東北が舞台)の関連作品を展示
マンガッタンライナー
仙台市と石巻市を結ぶJR仙石線にマンガの列車「マンガッタンライナー」を毎週日曜日に運行。
※石ノ森萬画館ではマンガッタンライナーに乗車した石巻駅の乗降者に乗車証明書を配布。
マンガロード(通称)
JR石巻駅から石ノ森萬画館まで街中に石ノ森作品のキャラクター像(モニュメント)のマンガロードを設置。
②販促亊業
石ノ森作品のオリジナル商品の販売
石ノ森萬賀館グッズショップ「墨汁一滴」(漫画館1F)において、仮面ライダー、サイボーグ009、ロボコン等の石ノ森作品の完全独自のオリジナル商品の生産販売。
※オリジナルグッズはネットショッップ(http://bokujyu.net/)でも販売
展望喫茶 BLUE ZONE
石巻の街並み、日和山、北上川を展望できる宇宙船のコックピットをイメージした展望喫茶(漫画館3F)。
※店名は石ノ森先生の短編SF「BLUE ZONE」から命名
③まちづくり亊業
復興開発亊業推進支援
震災後、当初の中心市街地活性化プロデュースから復興プロデュースに切り替えて住民を中心に、行政、商工会議所、大学等を交え、未来を見据えた「まちなか復興会議」に参画して復興計画の推進を支援。現在は、石巻中心市街地の復興特区認定を受けて復興計画の指定会社。
生鮮市場の開業支援
復興まちづくりの第一歩として仮設商店街「石巻まちなか復興マルシェ」を運営母体の事務局として参画してオープン。現在は、「いしのまき元気いちば」として旧北上川の水辺に生鮮食品を扱う「石巻しみん広場」、直営食堂、飲食店、特産物店及び大型駐車場等を備えた中心市街地の集客拠点へと移行。
中心市街地活性化計画策定支援
中心市街地の復興と活性化のために、各商店街や関係団体との連携を図りながら、人口減少・少子高齢化に対応した持続可能なまちづくりの最先端モデルとなることを目指して、地元商店主、行政関係者、有識者等を交えた「コンパクトシティいしのまき・まちなか創生協議会(通称:まちなか協議会)」による復興整備とまちづくりに向けた取組の支援。
インキュベーション施設の企画運営
市街地の橋通り地域に誰もが新事業に気軽にチャレンジできる場所での出店(チャレンジショップ)や各種のイベントが可能なウッドデッキステージの常設と、新たな魅力の創出を目指す「部活動」制度とにより中心市街地に多くの人が集い、共に街の将来を語り、価値観を「共有=Common」できる場所の企画と運営。
商店街のまちづくり支援
まちなかの交流人口増加の一環として、広く街の賑わいを創出するために、市内の中心商店街を会場に開催している「トリコロール音楽祭」、「STAND UP WEEK」等の各種のイベントの開催や商店街のストリートマネジメントにより、「市民に使ってもらえる商店街づくり」に向けての支援。
まとめ
1)㈱まちづくりまんぼうが、今後目指していきたい取組:
・エリアマネジメントの体制づくり:河川空間の活用、都市再生推進、空家バンク等の地域開発
・強い個店づくり:まちなか商店の亊業協同組合化と商店の亊業継承
・マンガッタンミュージアム構想 :街なか全体のミュージアム化
2)当初の石ノ森漫画館を中心とした市街地の活性化を目指す取組から、震災後は復興をベースとした市街地のまちづくり全体に亊業が大きくシフトしたことで行政を含めた関係諸団体との広域な連携で、より広範で多様な取組に事務局として参画している。
3)市街地のまちづくりに関しては、行政と市民を繋ぐ役割を担っており、石ノ森漫画館の指定管理と石ノ森作品のグッズの売上をベースにまちづくりに取組んでいる。現状、㈱まちづくりまんぼうは、まちづくりのプラットフォーム的なポジショニングになっている。
4)石ノ森漫画館の入場者自体は減少傾向にあり、今後、石ノ森漫画館の健全経営を目指しながら、まちづくりの取組も併せて行っていくことは、人材的にも負担が大きいように感じる。指定管理(売上の約20%)が無くても石ノ森漫画館の運営ができることをまずは最優先に目指した方がいいのではないかと感じる。
5)石ノ森作品の版権使用料(ロイヤリティ)は、キーホルダー類で10%程であり、基本的に国内、海外での使用に関する権利を保有している。オリジナルグッズ販売は、特に海外において、日本のマンガ文化の普及が期待されることから、より積極的な販売展開をした方がいいのではないかと思う。
6)前身の「橋通リCommon」でのチャレンジショップから実際に市街地で店を構えた人は三軒であった。この数字をどう評価するかという曖昧さがあるが、個人的には少ないように思う。「Common-Ship橋通リ」においても継続してチャレンジショップの場所を提供しているが、今後の展開が興味深いところである。
7)石巻市と㈱まちづくりまんぼうが、取組んでいる復興計画とまちづくりは、一層顕著になってきている人口減少・少子高齢化にも対応できる最先端のまちづくりを目指しており、大変、興味深い取組であると感じる。
特に、市民主体で”ゼロベース”からのまちづくりは、他の市町村でも参考になる可能性があり、岡谷市にとっても、中心市街地、特に駅前開発とまちづくりという視点からは大変に参考になるのではないかと思う。